【業界研究】プログラマー・エンジニアの可能性

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【業界研究】プログラマー・エンジニアの可能性

writer:伊藤

 サムテックの伊藤です。IT業界に身をおいてちょうど3年になります。今回の記事ではプログラマーやエンジニアの将来の可能性について自分の考えを示していきます。自分自身、金融業界、人材業界と渡り歩いて今の業界に身をおいていますので、そこと比較しながら感じるIT業界の雰囲気やエンジニアに対して感じる期待をお伝えできればと思います。

日米の年収比較から見るプログラマー・エンジニアの可能性

 まず、最初にエンジニアになって思ったこととしては思ったよりお給料が高くないということです。プログラミング学習が必修になったとはいえ、まだまだエンジニアの人材不足は顕著です。専門のスキルもあります。なのに、そんなに給与が高くない。実際、PayScale*が提供しているデータによると、アメリカのソフトウェアエンジニアの平均年収は2024年4月時点で平均$93,337(152円/ドルで計算すると、約1418万円)となっています。一方、日本のエンジニアは468万円となっていて、3倍以上開きがあります。

 これだけ世界的に注目されている職種なので、グローバル水準では大きく給料が上がっていますが、下請け文化の蔓延っている国内では上がりにくい現実があるのかもしれません。IT業界に入る前はそのことには気づきにくいでしょう。更にBaseSalaryの項目を見ると、アメリカのエンジニアが$6.8万~$13.6万ドルと新人エンジニアのような技術力の低い人に対しても1000万近い給与が支払われているのに対し、日本では254万円と4倍近い開きになって、日本の方が圧倒的に経験を重視していることがわかります。筆者のような未経験中途入社には厳しい現実が待っているのが今の実情です。

 PayScaleではプログラマーのカテゴリがなかったので、詳細はわかりませんが、プログラマーも概ねソフトウェアエンジニアと同様の結果になるのではないかと思います。

*PayScaleはアメリカのシアトルに本社を置く企業で、個人が自分の価値を理解できるようにデータを分析・提供している会社です。

アメリカのエンジニア平均年収
日本のエンジニア平均年収

 では、日本のエンジニアはこのままあまり高くない給料のままなのでしょうか。業界全体に波及するのはまだ先になるかとは思いますが、個人や会社単位のレベルではエンジニアの給与水準もアメリカの給与水準まで引き上げることが可能だと思っています。というのも、IT業界というのは他業界に比べて圧倒的にオープンな環境にあります。エンジニアはGithubを利用して海外のエンジニアのコーディングを参考にできますし、利用することも可能です。Githubにアップロードをしたら、自分のコードを見てもらうこともできます。国内ではQiitaが有名ですが、stack overflowというコミュニティサイトを通じて、海外のエンジニアにアドバイスを求めることもできます。コーディングのコンペティションなどは世界規模で行われています。

 同様に、海外案件を引き受けられることができれば、大きく売上や収入を伸ばすことができるでしょう。他業界に比べてリモートワークが圧倒的に普及しているので、オフィスのある地域に居住する必要がないというのも大きいです。日本に住みながらアメリカの案件を受注できれば、低い物価でコストを押さえつつ、高い収入を得ることができるでしょう。

 更に、日本とアメリカは時差が大きいので、アメリカ人が仕事をしない時間帯に作業を進められるというメリットもあります。もちろん海外と契約や仕事のやり取りをする語学力が必要にはなりますが、数年の自己投資をすれば個人や企業単位で海外の企業から受注するのは夢ではないように思えます。

 ちなみに、アメリカの企業はクライアント側にIT技術者がいる割合が日本に比べて圧倒的に高く、リテラシーの高い企業が多いです。多少、語学力に不安があったとしても、こちらの技術力を証明できれば信用してもらえる可能性が高いかもしれないですね。

副業推進に伴うプログラマー・エンジニアの可能性

 プログラマー、エンジニアは圧倒的に副業のしやすい職業です。もちろん会社の規定でできないという所もあるかもしれませんが、筆者の感じる所としてはむしろIT業界は副業にオープンな企業が多いのではないでしょうか。LAPRAS株式会社が調査したデータ(参照:prtimes)によるとITエンジニアの2人に1人は副業経験があり、厚生労働省が令和2年に公表した「副業・兼業に係る実態把握の内容等について」の全体副業割合9.7%を大きく超える水準にあります。

では、具体的にどんな副業が考えられるのでしょうか。1番は自分の技術を活かして、業務委託の案件を引き受けたり、自作のアプリを作ったりすることが考えられます。ランサーズやクラウドワークスなど個人が業務を引き受けるプラットフォームも今は整備されているので、上手に活用すれば個人で継続的な顧客企業を獲得することも不可能ではありません。自作のアプリから日本を代表するIT企業に成長した会社としてはメルカリがあげられます。アイデアと技術力次第では青天井で収入を伸ばしていくこともできるでしょう。仮にうまくいかなかったとしても1からアプリをリリースするのは相当骨の折れる作業です。この経験は必ず本業に活かされますし、やって損はないと個人的には考えています。

 一方、1から自作のアプリを作ったり、仕事の合間で更に仕事を引き受ける余裕などないという人もいるかもしれません。そういった人はオンラインスクールのメンターなどを選択肢にできるかもしれません。オンラインスクールは受講コースが分かれているので、JavaだったらJavaのメンターという風に自分の得意な分野に絞ってコーチングすることが可能です。人に教えることで自分の頭も整理されますし、時給も1500円前後からスタートするので、隙間時間でする仕事としてはかなり魅力的なものではないでしょうか。

 アルゴリズムに詳しい人は株価のAI予測モデルを作成して、株式の自動売買をしてみるのも良いかもしれません。損をする可能性もありますが、そのモデルの精度が高ければ資産を指数関数的に増やしていくことも可能でしょう。特に誰かと話したりする必要はないので、エンジニアにありがちなコミュニケーションが苦手という人でも始めやすい副業かもしれません。

社会問題から見るプログラマー・エンジニアの可能性

 日本が抱える最大の問題の1つとして少子高齢化、人口減少の問題があります。詳しい話はここではしませんが、2023年には出生数758,631人に対して、死亡者数1,590,503人、自然減が831,872人と、都市で言うと静岡や岡山くらいの人口が毎年減っている計算になります。また、2024年には人口の50%以上が50歳を超えるとされており、高齢化問題も深刻です。(参照:日本経済新聞)

高齢化推移グラフ

 このまま日本が人口の減少と共に沈没していく可能性も十分にあるとは思いますが、そうならないためにできる選択肢というのは実はそんなに多くありません。1つは出生率を回復させること。政府が子育て世代の支援策を打ち出していますが、出生率低下の一番の原因は婚姻数の低下や晩婚化なので、あまり大きな改善にはならないかもしれません。次に、海外から移民を受け入れること。アメリカは海外から移民を積極的に受け入れることで発展していきましたが、現状、国内での反発は強いので、こちらもすぐには難しいかもしれません。

 そして、最後は生産性を上げること。この生産性を上げる手段として注目されているのが、業界・組織の構造改革やIT技術の活用です。ただ、残念なことに業界・組織の構造改革というのは、今、影響力のある組織で働く人にとってはメリットがあまりありません。株主の圧力もあって最近は少しずつ進んでいますが、政府や大企業にとっては居心地の良さを失うことになりかねないので、急激に改革が進むということは考えにくいです。

 そこで最も注力されるのがIT技術の活用です。日本では上から下までアナログが浸透していて、省庁では1つの参考書類を見つけ出すのに大量の紙文書から数時間かけて探し出すこともザラだという話もありますし、中小企業では今もFAXでやり取りしている会社が結構残っています。

 このようなアナログ作業はあらゆる所で残っており、それらをひとつひとつ省力化・自動化していく作業が必須となります。その際、プログラマーやエンジニアは陣頭指揮をとる存在となります。今後も需要は右肩上がりで上がり続けることが考えられるため、必然的に地位は上がり、人やお金が多く集まってくるようになるでしょう。

IT業界の特性から考えるプログラマー・エンジニアの可能性

 IT業界は、1920年代にIBMが世界で最初のコンピュータを発明した時に誕生した業界で、歴史としては100年しかありません。1960年代、複数の大学間を結ぶ世界初のパケット通信ネットワーク「ARPANET」が誕生し、インターネットの先駆けとなりました。1990年代にはMicrosoftのWindowsが爆発的にヒットし、それまで政府や大企業でしか扱えなかったコンピュータが各家庭レベルに普及しました。2000年代にはAppleからiPhoneが発表され、1人が1つスマートホンを持ち、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる時代が到来しました。2010年代にはソフトウェア企業が世界の時価総額上位を独占し、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が世界経済をリードするようになりました。そして、2024年現在、AIブームの真っただ中にあり、IT業界は益々早く、大きな広がりを見せるようになってきています。

 このように急成長を続けるIT業界の発展を大きく支えたものにインターネット上に広がるオープンな文化があります。例えば、Android OSはオープンソースで利用可能で、世界の開発者が自由に利用することができます。AI開発に必要な学習データセットもオープンデータとして無料で公開されているものが多くあります。もちろん各企業のコア技術に関して秘匿されることには変わりありませんが、他業界と比べて圧倒的にオープンで技術もシェアされている文化であることがわかります。

 このような文化において、プログラマーやエンジニアは自己の判断で様々なテクノロジーにアクセスし、スキルを身につけることができます。最新のトレンドであるAIも例外ではありません。世界最大級の機械学習プラットフォームであるKaggleでは政府や企業主導で頻繁にコンペティションが行われており、世界中のエンジニアがモデルの精度を競っています。いくつか関連書籍を購入して学習した後にそういったコンペに参加してみるのも良いでしょう。モデルに利用されるアルゴリズムがわからなければ、その前にAtCoderなどでアルゴリズムの勉強をしても良いかもしれません。

 AtCoderでは初心者のために複数の学習問題が用意されている他、国内最大級のアルゴリズムのコンペティションが行われています。学習を経て得られた知見はQiitaに投稿しても良いですし、書いたソースコードをGithubにアップロードし公開しても良いでしょう。もちろん自分でアプリを作って、GoogleプレイストアやAppleストアに公開してみても良いでしょう。うまくいけばメルカリのような大企業に成長する可能性があります。
どの選択をしたとしても成功には忍耐強く努力を続けることが必要ですが、自分で自由に生きることが限りなくできる業界です。

 また、IT業界では巨人が巨人でい続けることは殆どありません。他の業界では30年前と今で時価総額上位の企業が同じ顔ぶれというのは割と当たり前かもしれません。でも、IT業界で30年前も今も巨人というのは、おそらくMicrosoftくらいしかないのではないでしょうか。AmazonやGoogleは1990年代に誕生した会社で30年前は自宅のガレージをオフィスにしているような小さな企業に過ぎませんでした。これからの30年も同じことが起きるでしょう。今はオフィス街の一角で営業しているような小さな会社が世界一の企業になるかもしれません。そういった企業を自分で起業するのも良し、世界一を目指す経営者の下でCTOを目指すのも良し。本当にプログラマーやエンジニアというのは夢と希望の詰まった職業だと筆者は考えています。

まとめ

 ここまでプログラマーやエンジニアの可能性について筆者の考えを示してきました。どうでしょうか。プログラマーやエンジニアに対してポジティブなイメージは持てたでしょうか。実際に仕事をしてみるとわかるのですが、先に紹介したような夢や希望とは裏腹にほとんどは地味な作業ばかりですし、日本には多重下請け構造の問題もあり、思ったよりお給与が高くないし、残業も多いなどイメージと真逆になることが多いと思います。(弊社は残業は少ないです!)ただ、そこでめげずに自分を信じてスキルを身につけ続けるようにしてください。積み重ねがものを言う業界です。必ずやそのスキルを必要としてあなたの周りに人とお金が集まるチャンスが訪れます。そのチャンスをぜひつかみ取れるよう普段から準備を怠らないようにしてください。

参考サイト

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